メッセージ

無職4畳半風呂なし脳梗塞の孤独な20代後半が見た夢

日本にいたとき僕は20代後半の無職のさえない孤独な若者だった。東京の4畳半風呂なしアパートに住んでいた。 やりたいことの資金をためるため契約エンジニアをやり、契約が切れると英語を勉強し自分の苦境から脱出しようとしていた。しかし普段からの心労からか脳梗塞になってしまった。入院した病室の天井を見上げながらこの現状をいかに打破しようと考えていたが、もがいていても何もうまくいかない時期もあるんだなと。この経験から僕は、プータロー、無職、ニートや、引きこもりの人達の不安や苦労が涙が出るほどよくわかる。

そんな生活を続けてまでも僕にはやりたかったことがある。大学院留学のために渡米し、優秀な教授陣を抱えるアイヴィーリーグの大学で、世界中から集ってくる優秀な学生達、まだ見ぬ同級生のライバル達と互角に勝負し、博士号をとって、アメリカの片田舎の大学教授になってそこに永住することだ。

僕は脳神経外科の病室でパソコンとタイプライターを持ち込み、大学院留学のための願書を書いた。

ニューヨークの貧困層とアメリカンドリーム

今はニューヨークというアメリカ国内でも最大の人口をかかえる大都市にひっそり住んでいる(週末は家族のいるアメリカの首都・ワシントンDC)。ニューヨークは世界経済の首都と言われているが、ただ単に裕福な人だけが集まってくるのではない。そもそもアメリカは多民族国家でヨーロッパや他の地域から移民が流入してできた国だ。そして今現在でも新しい移民たちがアメリカンドリームを夢見てここニューヨークに集まってくる。 ここは昔も今も移民の街なのだ。 しかし、基本的にアメリカに来た移民の一世・二世は貧しいし、現実は甘くはない。それでも自国の政治や経済の不安定さから比べるとアメリカンドリームはまさに輝く夢。夜中自転車でピザを宅配しているヒスパニックの若者や、夜中誰もいないビルでモップ掛けをしている中年女性清掃員は、生活のために最低賃金で働いているいわゆる低所得者層かもしれない。でも彼らは懸命に這い上がろうとしている。

僕は経済的、政治的困窮を逃れるためにニューヨークに移り住んできた移民家族の子供たちに、ニューヨーク市立大学(CUNY)工科校という公立大学で機械工学(ロボテックス)やプログラミングなどのテクノロジーを教えている。ピザを宅配している若者に、スキルを身に着けて技術者としての職を得てもらうためだ。そして、貧困世帯から中流世帯に移行してもらうためだ。日本では、貧しくても勉強し有望な大学に入れば、いい就職ができ貧乏から脱出できるかもしれないが、アメリカはそんな流動性は少ない。低所得世帯・労働階級から中流、アッパーミドル、富裕層、スーパーリッチへのモバイラビリティーは極端に少なく、貧乏出身は貧乏のまま、金持ちの子供は金持ちのままとういうのがまだまだ一般的なのだ。アメリカの貧困対策や貧困層救出の政策はどれも改善の余地がある。僕の勤務している大学は、日本でいうモノづくり大学、もしくは職業訓練校のような雰囲気で、そこの学生はいわゆるマイノリティーの人たちだ。「ピザ宅配やレジ打ちの仕事よりエンジニアの方がかっこいいよ、給料もいいよ」といって若い学生を惹きつけ講義に出てもらっている。

まだ見ぬ若き未来のスーパーヒーロー

そういうテクノロジーの講義を担当しつつ、研究活動も学生と一緒にやっている。僕の研究テーマはData-driven Sustainablity(情報駆動型持続可能性)というあまり知られていない分野で、従来の地球環境学から新たに派生された学問領域である。衛星情報を使った従来のリモートセンシングの技法のみならず、AIやデータサイエンスなどデータアナリシス・定量解析・数値シミュレーションの手法を取り入れた環境学といっていいだろう。このような新しい環境学のテーマとともに、従来からある環境汚染から地球を守ったり地球温暖化を防ぐためのテクノロジーも研究している。消費文化が根付いているここアメリカで、このゴミだらけの大都市ニューヨークで、環境問題を解決するための策はないかと一人で戦っている(大げさかもしれないが少なくとも僕はそう感じている)。僕が指導している学生達はいつか将来地球の明日を担う”Environmental” Superheros(《環境》スーパーヒーローズ)として活躍すると信じている。そして僕より何倍も大きく成長した彼ら環境スーパーヒーロー達が、環境問題に取り組む私を「助太刀」するために僕のオフィスのドアをノックするだろう。そんなスーパーヒーローと出会う日を夢見ている(ドキュメンタリー出演)。

銃乱射で子供たちが撃たれていくーアメリカの銃社会

そして、 これらマイノリティー教育と地球環境学の分野での研究と、他にもうひとつ僕が真剣に取り組んでいるプロジェクトがある。アメリカの銃社会をハックし、テクノロジーとデザインで銃による自殺・他殺・誤使用を食い止めるため、『撃てない銃』を開発することだ。ニューヨーク・ブルックリン区長主催のスマートガンデザインコンペで、僕の学生のチーム(研究チームと工業デザインクラスのチーム)がファイナリストになった。そのアイディアを応用して少しでも銃による犠牲者を少なくしたいし、特に子供やティーンエイジャーが尊い命を落とすのを防ぎたい。これら自殺や他殺は銃のデザインやテクノロジー応用で抑えることが可能だと僕は本気で思っている。僕の周りのアメリカ人は無駄だといい、鼻で笑う人もいる。でも、もしマザーテレサやガンジー、キング牧師やケネディが 、今の時代のアメリカで エンジニアだったり工業デザインをやっていたら、少なくとも行動に移しソリューション(解決策)は出すと思う。

100年後も200年後もアメリカが銃で悲しむ社会であり続けるとは僕は思わないし、そんな銃社会がアメリカだけ続くという未来 は、僕は想像できない。 きっとアメリカはよくなる。僕らの社会はこれからも前進するんだ。そんな未来を思い描いている。

読んでくれてありがとうございます。

マサトナカムラ

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