【NY発テック最前線】2019年世界のテックトレンドとバズワード

– デジタル・ツイン、エンパワード・エッジ、没入型テクノロジー、スマート・スペース?-

キーワード: 自動化されたもの(Autonomous things [Robotics, Vehicles, Drones, Appliances, Agents]), 拡張分析 (Augmented analytics), AIによる開発 (AI-driven development), デジタル・ツイン (Digital twins), エンパワード・エッジ (Empowered edge) , 没入型テクノロジー (Immersive technologies), ブロックチェーン (Blockchain), スマート・スペース (Smart spaces), デジタル倫理とプライバシー (Digital ethics and privacy), 量子コンピューティング (Quantum computing)

未来の技術革新やテクノロジーのトレンドを探るのはとても重要なことだ。特に技術開発やイノベーションにかかわる仕事をしていると、そのトレンドの波を、風を、うまくとらえて、前に進んだり、高く昇ったりしなければならないからだ。

私の下記のTwitterでも紹介した通り、2016-17年に プライス・ウォーターハウス・クーパース(PricewaterhouseCoopers :PwC)が予想した2020年に向けて躍進するであろう8つの技術、エマージング・テクノロジーは、

  • Artificial intelligence (AI, 人工知能)
  • Augmented reality (拡張現実)
  • Blockchain (ブロックチェーン)
  • Drones (ドローン)
  • Internet of things (IoT, もののインターネット)
  • Robotics (ロボテックス)
  • Virtual reality (仮想現実)
  • 3-D printing (3Dプリンティング)

だといわれていている。今では仮想現実と拡張現実は同じ領域のテクノロジーとみなす場合が多い。ハードウェア的な分野は、ロボティクス、と3Dプリンティング、ドローン。そして、ソフトウェアの分野では、アルゴリズム的なテクノロジーは人工知能 (AI)、拡張現実、仮想現実。特にネットワーク的な部分が大きいテクノロジーはブロックチェーン IoTといったところだ。

では2018年時点ではどうだろう?World Economic Forum によると 2018年に躍進するテクノロジー(The top 10 emerging technologies for 2018 )は、

Source: World Economic Forum
https://www.weforum.org/agenda/2018/09/top-10-emerging-technologies-of-2018/
  • Augmented Reality Everywhere (どこでも拡張現実)
  • Advanced Diagnostics for Personalized Medicine (個人処方のための先端診療)
  • AI for Molecular Design (分子デザインのための人工知能)
  • AI That Can Argue and Instruct (言い争ったり指示できる人工知能)
  • Implantable Drug-Making Cells (インプラント可能な薬製造細胞)
  • Lab-Grown Meat(ラボで育ったお肉)
  • Electroceuticals (電気薬学)
  • Gene Drive (遺伝ドライブ)
  • Plasmonic Materials (プラズモン材料)
  • Algorithms for Quantum Computers (量子コンピューターのためのアルゴリズム)


となっている。ここに挙げたテクノのジーはまだまだ研究段階で実用化のためにはまだまだいくつかのハードルがある。だが、実現すれば社会が大きく変わる重要なテクノロジーばかりだ。例えば、インプラント可能な薬製造細胞 でインスリンを作る細胞を作れば、糖尿患者を救うことができるし、遺伝ドライブで恣意的に遺伝性の難病を防げたりできる。電気薬学は脳や神経系に電極をさすことによって患者の痙攣などを抑えることができたり、電気的刺激が脳の記憶処理を改善できたりする。

最新の2019年ではどうだろか?ガートナーが発表した2019年の技術トレンドはトップ10は、

  • Autonomous things (Robotics, Vehicles, Drones, Appliances, Agents) (自動化されたもの)
  • Augmented analytics(拡張分析)
  • AI-driven development(AIによる開発)
  • Digital twins(デジタル・ツイン)
  • Empowered edge(エンパワード・エッジ)
  • Immersive technologies (没入型テクノロジー)
  • Blockchain (ブロックチェーン)
  • Smart spaces (スマート・スペース)
  • Digital ethics and privacy(デジタル倫理とプライバシー)
  • Quantum computing (量子コンピューティング)

である。これらのエマージング・テクノロジーの解説は次の機会に記事で詳しく述べるとして、注目すべきは、これらのエマージング・テクノロジーが毎年変遷していることである。それ以外にもバズワード、流行の造語などがたくさん作られていて、新しいジャンルにカテゴライズされているというか組み込まれている(飲み込まれている、の方が的を得ている?)。

– 新語・造語・バズワードはその時代を反映している –

そもそもAIという人工知能を言葉も解析するデータとアルゴリズムを一つのカテゴリーにパッケージしてセンセーショナルに人が造った知能と表現に過ぎない。我々数値解析の研究者からすればMachine Learning やDeep Learning は一つのアルゴリズムでありデータ分析の技法である。2016-17年の8つのエマージングテクノロジーについても同じことがいえる。ドローン技術はヘリコプターやホバークラフトなどで使われる航空技術や流体力学が元になってるし、拡張現実や仮想現実は3Dグラフィックスの技術がベースになっている。3Dプリンターに至ってはCNC(コンピュータ数値コントロール)旋盤や工作機械が原型だ。

1960年代は有機化学は新しい資源を作るものとして「人造石油」というものがはやった。資源の乏しい日本では「人造石油」は夢のような言葉は人々を魅了した。また、「人工血液」や献血や輸血が必要なくなる将来をセンセーショナルに表現した言葉だ。「試験管ベビー」なる表現は体外受精をあたかも実験室のラボで人為的に作られた赤ちゃんということで倫理的衝撃を与えた。いまでは不妊治療の一環として広く普及しているが、当時は驚きの施術手法だったのだ。

ちなみに、私の専門分野の地球環境学でも、バズワードは変遷している。2-30年前まではオゾンホールが問題で、ここ10-20年前は地球温暖化や温室効果ガスなどがバズっていたが(いまもバズっている)、ここ近年ではプラスチック・ポルーション(プラスチック汚染)なる言葉が出できてマイクロプラスチックが環境や生態系に与える負担が注目され、プラスチックそのものが社会の敵になってきている。

これから向こう5年でどんなテクノロジーが躍進するのか注目していくことをお勧めする。あなたが時代遅れになってしまって、AIに取って代わる代替要員とならないために。

読んでくれてありがとうございます。
Twitterで会いましょう@MasatoNakamura Dr. マサト・ナカムラ

Please follow and like us: