【NY発テック最前線】AIがあなたの歯を治す? – コンピュータ支援化が進むアメリカの歯科業界 –

キーワード: AI 、アメリカ、歯科業界、コンピュータ支援、コンピュータグラフィックス、3DCAD、内療法専門医 、根管治療、ニューヨーク大学 、歯学部大学院 、低所得者 、マイノリティー

まず見てもらいたいのが下記のYoutube動画。これは 根管治療 (歯の根の治療)の際の実際の患者の歯の状態を3Dグラフィックスに投影し、画面にリアルタイムに表示した 治療支援システムである。

根管治療(Root Canal Treatment) のプロセスでは根管の最深部は歯の根っこの部分なので、非常に難易度が高い。基本的に細い根管は目視できないし、経験則がものをいう世界なのだ。それゆえ、 歯内療法専門医(endodontists) の卵である専門医プログラム(大学院に相当する教育プログラム)の学生は 根管治療 、他の専門医プログラムの学生はインプラントのスキルを習得するのにはかなり注意を払うらしい。

ここで ダイナミック3Dナビゲーションと呼ばれているこのYoutubeのテクノロジー。患者の口内をスキャンして3Dデータを取得し、X線写真を統合したイメージを表示する。と同時に患者の顎と、 歯内療法専門医 が手に持つドリルの両方に 3軸慣性力・ジャイロ・加速度センサ一をつけ、天井につけたカメラでそれぞれのマーカーを検知している。それらセンサー及びカメラからのデータをもとに、モニター内の3Dモデルと実際の治療状況とをダイナミック(動的に)にシンクロさせる。そうすることによって、 歯内療法専門医 は ファイル(細長いドリル) の刃の角度と削った深さをリアルタイムで知ることができる。例えば、根管の底に達すると円状のインジケータが黄色からグリーン、赤に代わり根管の深さをグラフィカルに教えてくれる(動画の例では12ミリ)、など。

この3Dグラフィックスとセンサーの応用例は、 米国ニューヨーク大学歯学部大学院で教鞭を執られているKATSUSHI OKAZAKI, DDS, PhD 教授から教えていただいた 。最初は3Dプリンターでルートキャナルの位置や角度をガイドするスカフォルド(土台)を作れば 根管治療 も安価で素早くできるので、その3Dプリンティング技術を授業に取り入れるカリキュラムの実験を話し合っていた。だが、スカフォルドをプリントせず、この3Dセンサー&カメラでコンピューター上で治療過程を確認する手法は、もっと治療のコストを下げることができる。ベテラン 歯内療法専門医 の腕に頼らず若い歯医者も正確に治療できるので、ニューヨークや他の都市部の低所得者やマイノリティーの歯を守ることに貢献するのではという話。

実は機械工学とデンタル業界は親和性が高い。特に3次元CADモデルや3Dスキャナー、切削などの製造過程に使われる技術は、X線写真の画像処理などを含めて歯学業界にすでに応用されているからだ。

このテクノロジーは、米国ペンシルバニア州にある X-Nav Technologies 社 http://www.x-navtech.com/ が開発したが、これらの類のテクノロジーが歯科医療業界に普及し、インプラントや根管治療のコストが下がることによって、保険のない低所得者世帯にも歯の健康を維持してもらいたいと願っている。

読んでくれてありがとうございます。Dr. マサト・ナカムラ

Please follow and like us: