エリート大学・有名校の学生とどうやって競争していくんですか?
学生「でもニューヨークや州外から来るエリート大学・有名校の機械工学の学生とどうやって競争していくんですか?レジュメの見栄えをよくしただけでは到底太刀打ちできないです」
僕「言っていることはわかるよ」
学生「じゃあどうしたらいいですか?」
僕「じゃあちょっとだけ話聞いてくれる?まず、 」
学生「はい」
僕「認識すべき点が2つある。1つは、僕らが今置かれている立場。君と僕はCity Techというテックカレッジの学生と教授だけど、City Techの正式名称いえる?」
学生「自分の学校ぐらい言えますよ。New York City College of Technology」
City Techは知られてないですよね
僕「うん、君はレジュメにもそう書いた。でも、New York City College of Technologyと聞いてみんなわかるか?有名だと思う?MITやスタンフォード大学なら誰もが知ってる、多分アメリカ人じゃなくても世界中の人が知ってる有名校だ」
学生「その反面、City Techは知られてないですよね」
僕「それどころか間違えられる。僕も2011年にCity Techに赴任したときに、 『ああーCity College(CUNYの一番古いカレッジ)ね』って言われたし、いやいやテクノロジーの学校ですって言ったら『知ってるよNYITニューヨーク工科大学ね』って。いやブルックリンですって言ったら『ああNYUPolyねー』って。ニューヨーカーにも知名度がないんだ」
学生「確かに似たような経験があります」
僕「でしょ?名前が有名って大事なんだよ」
学生「じゃあどうすれば?」
正式名称だから?知名度があるからだよ
僕「まず間違われないように長い正式名称の後にニックネームのCity Techとカッコで記入する」
学生「New York City College of Technology (City Tech)って書けばいいですか?」
僕「そう、それと実はもっと大事なのは、City TechがCUNYのテックカレッジだということを強調する。つまりニューヨーク市立大学とその略字。君のレジュメにそれが書いていない。致命的だよ」
学生「The City University of New YorkとCUNYですか?」
僕「そのとおり。どうして大事かかわかる?」
学生「正式名称だから?」
僕「というよりも、知名度があるからだよ。残念ながらCity Techっていうカレッジは誰も知らない、ニューヨーカーでもあまり知られてない。でもCUNYはニューヨーク州に住んでる人なら誰でも知ってるし、全米一の人口を抱えるニューヨーク市のパブリック大学だから州外でも知ってる人が結構いる」
Neoconservatism(新保守主義:ネオコン)って聞いたことある?
学生「へえーそうなんですか~」
僕「うん、昔、アメリカでユダヤ人の移民の学者も教授職を得られなかった頃、CUNYは彼らを教員として片っ端から採用したりで、結構、アメリカ左派の言論の中心的な大学になった」
学生「へえー」
僕「Neoconservatism(新保守主義:ネオコン)って聞いたことある?ネオコンの源流になったのがCUNYなんかにいたユダヤ系の”ニューヨークの知識人”だったんだ。当時のアイビーリーグはWASPのための大学だったからね」
学生「あんまり詳しくないですけど。。」
僕「CUNYはそういう歴史もありまあまあ知名度はある。そして、やっぱりニューヨークって誰もが知っている町の名が大学名に入ってるってやっぱり強い」
学生「そうかなー」
パリ大学やロンドン大学=フランスやイギリスに留学してたのね
僕「それは確か。だって例えばパリ大学やロンドン大学卒業しましたって言ったら、フランス又はイギリスに留学してたのねって他人はすぐわかってくれるでしょ?」
学生「まあ。。」
僕「もう一つの例は僕の卒業した大学」
学生「コロンビア大ですか?」
僕「いや、じゃなくて、僕は日本のホッカイドウと言うロシアに近い島出身で、カナダやアラスカみたいな寒い地元のホッカイドウ大学と言う大学を出たんだけど、」
学生「寒そう」
僕「アメリカでは全然知名度がない。」
学生「全然知らないです」
サッポロはサッポロビールの本拠地なの。親近感沸くでしょ?
僕「日本の都市言える?」
学生「トウキョーですか?」
僕「うん、トウキョー大学だったら東京の大学で知らなくてもイメージ湧くじゃん?」
学生「はい。。」
僕「でもホッカイドウだとアメリカ人誰もわかってくれない。でもね、その大学、サッポロにあるんだよ」
学生「ビールの名前みたいだね」
僕「そうサッポロビールの本拠地なの。そう説明すると、親近感沸くでしょ?」
学生「でもエリート大の学生達とどう戦うんですか?」
でもエリート大の学生達とどう戦うんですか?
僕「つまり、NYがホームタウンのCUNYという名前をレジュメにちゃんと書いて、有名校の知名度で名前負けしないという精神面で自信を持つ」
学生「それだけですか?」
僕「大事なことだよ。MIT(マサチューセッツ工科大学)の学生だって脅威かもしれないが、ケンブリッジからNYに来て、NYの環境に耐えきれなくなってすぐ辞めちゃうかもしれない。その点君たちはNYの文化が最初から体に染みついてるからノイローゼにならないかもしれない。NYで就職したい場合、ここが君たちのホームだから絶対有利。家族や旧友、ガールフレンドも一緒で学生生活の延長だから、ストレスも少なく仕事できるかもしれない」
学生「でもトップスクール卒に勝てるとは思わないなあ」
僕「勝てる。つまり認識すべき点の一つ目は、NYでの就職活動は君達がホームで、彼らがアウェーだということ。それで、二つ目は、」
学生「はい。。」
僕「君達が圧倒的に有利なことがある。それは、」
学生「何ですか?」
君たちのデグリー(学位)の名前にヒントがある
僕「君たちのデグリー(学位)の名前にヒントがある」
学生「名前?デグリーの名前ですか??」
僕「君のレジュメにどういう風に書いた?」
学生「アソシエイト(準学士)とバチェラー(学士)ですけど?」
僕「そう君はMechanical Engineering Associate and Bachelor degreesと書いた。正式名は? 」
学生「正式名?何でしたっけ?この書き方で皆わかりませんか?」
僕「レジュメなんだから正式名称をきちんと書かなきゃならない。何でしたっけはひどいなあ。自己紹介するとき君は自分の名前間違えないでしょ?もし自分の名前何だっけってなったら、本当に本人かどうか疑うよね、聞いてる相手は。まあいい、で、我が機械工学科が授与している学位の正式名称は、
Associate of Applied Science in Mechanical Engineering Technology
と、
Bachelor of Technology in Mechanical Engineering Technology
だよ。
長いから、またカッコでつけてそれぞれ、
Associate of Applied Science (AAS) in Mechanical Engineering Technology
Bachelor of Technology (BTech) in Mechanical Engineering Technology
って書けばいい」
BTech(ビーテック)ってあまり聞きなれないデグリーですよね
学生「BTech(ビーテック)ってあまり聞きなれないデグリーですよね」
僕「大抵の4大が授与するのはBA(Bachelor of Arts)又はBSc(Bachelor of Science)で、工学部はBEng(Bachelor of Engineering)もある。うちの学科は2年でAASをまず取り、更に2年BTechだから僕らは2+2と呼ぶんだ。それで本題は、 この2+2システムのおかげで君たちは1年生から専門科目を受けれるんだ」
学生「確かに1年目から, 工学製図, マシーンラボ, CNC, 材料力学, プログラミングってかなりやりますね」
僕「それが一つの強みで実際の現場で使えるハンズオンスキルを一気に学んでいるんだ。普通の4年制の工学部だと、 2年間は一般教養、専門は3年生からスタートするけど、City TechはAASがあるから1年生から機械工学をやりながら教養クラスを取る。この差は大きい」
学生「そうですかね?自覚ないですけど」
僕もね、日本でAssociate持ってるんだ
僕「実は僕もね、Associate持ってるんだ、日本で。National College of Technologyっていう高専と呼ばれる、高校と短大が合体したような学校で、1年生からエンジニアリングのハンズオンスキルを学んでね。しかも、3年生が終わる時点でCalculus I, II, III, Linear Algebra, PDEなどの大学教養レベルの数学は終えている。そのスキルと知識があったからホッカイドウ大学にトランスファしてもやっていけたんだ。 実はそのとき学んだハンズオンスキルは、ホッカイドウ大学だけじゃなく、コロンビア大学の博士課程に行った時も役だったんだ」
学生「本当ですか?」
僕「ホント!コロンビア大学なんてもう優秀な学生ばっかりいて、しかも博士課程には本当に天才で超優秀な人が世界中から集まってくるんだよ。そんなエリート軍団と競争して辛うじて生き残れたのは、Associate時代に習得したハンズオンスキルのおかげなんだ」
学生「どーせ先生がスマートだったんでしょ?」
僕「それは絶対違う。もしそうならもっと苦労せずにうまくやれた。そして苦労してきたからこそ君にレジュメの書き方や、トップクールやエリート大学卒との戦い方を伝授することができるんだ」
ハンズオンスキル
学生「ハンズオンスキルが有利だと。。」
僕「有名校の学生は競争に慣れているから、なにかで競争できるもので勝とうとするんだ。そして、オフィスワークや理論的な思考が好き。だからそういうポジションで競争しようとする。でも、
君達City Techの学生はマシーンショップや工場で油まみれになって実際のものを作るハンズオンスキルをみっちりやっただろ?しかも理論もそこそこできる。一方エリート大卒は実際に手を汚すようなことやりたがらず、オフィスで設計とかをやりたがる。両方できる君達と、片方だけしかやりたくない彼ら、どっちが企業は欲しいと思う?」
学生「うーん、僕らなのかなー」
僕「そのとおり。説明が長くなっちゃったけど、NYでエンジニアとして生き延びるにはレジュメを指摘したようにアップデートし、ハンズオンスキルを強調すること。製造業が弱くなっちゃったNYでメカ卒が生き残るにはハンズオンスキルを武器に、中規模な企業でフレキシブルに成果を出すしかない。多分トップスクール卒は大企業、例えばチェルシーのGoogleとかLong Island City(ニューヨーク市クイーンズにある地域)にできる(予定だった)アマゾンの第二HQ、もしくは自動車・航空産業の大きな企業しか見えてない。逆に君たちは、中規模な企業(中小企業)。どうしても大きいところがいいならMTA(ニューヨーク交通局)やConEdison(ニューヨーク市の電気・ガス会社。東京でいうと東京電力と東京ガスが一緒になったような会社)などがおすすめ。問題解決型のインフラ整備などのコンサルティング企業などもいいと思うよ」
学生「へえー、アプライしてみます」
エンジニア冥利に尽きる思い出を
僕「最後に補足したい重要なことがあって。。」
学生「何ですか?」
僕「エリート校卒の人は君達のエネミー(敵)じゃない。彼らと一緒に新しい価値を創りだすようなすごいプロジェクトをやってほしいんだ。それとエリート卒だろうとCity Tech卒だろうと関係ない。レジュメ作成とジョブハンティングを通して自信をつけて欲しいんだ。就職したらチームのダイバーシティ(多様性)を尊重し、すごい成果を出して、エンジニア冥利に尽きる思い出をたくさん作ってほしい」
学生「やってみます。。」
僕「Just do it!」
学生「この話をまとめたドキュメントとかありますか?メールで送ってくれませんか?」
僕「この話のドキュメント?そんなのないよ。僕のオリジナルの話だもん。。」
学生「忘れそうで。。」
僕「今話したことぐらい覚えてるだろー。今すぐレジュメをアップデートしろ!もうわかった、みんなを集めて講義だー」
これが僕の学生のためのNYでのエンジニアの就職活動を解説する【レジュメ・ワークショップ】
を開催した理由その4