【質問答えます】生きる意味って?

質問者Dさん「生きる意味とは(哲学)」

僕「生きる意味とはなかなか難しいテーマです。これを考えるうえで、死んでしまうこと(生きるとは逆の状態)の意味を整理とわかりやすいのではないかと思います。僕の専門は地球環境学で、特にデータドリブン・サステナビリティという耳慣れない分野を研究しているのですが、実はその分野からもちょっとヒントになる考え方があります。

地球環境学、特にデータドリブン・サステナビリティからのヒント

データドリブン・サステナビリティってデータとか情報を用いて持続可能性を探る分野で、IoT (Internet of Things)などのデバイスやセンサーを使ってデータを集めたり、それをコンピューターで分析したりする関係から、情報理論 (Information theory) を扱います。特にマテリアル(物質)、エネルギー、情報の3つの関連性を定量化し人と環境に与える影響を考えたときには情報理論を用いた考察は避けて通れません。ランダウアーの原理を発見したロルフ・ランダウアーはニューヨーク市マンハッタンの郊外ウエストチェスターで1999年に亡くなるまでIBMで研究を続けました。ハーバードで物理学の博士号を取ったドイツ系アメリカ人の彼は、新しい情報理論=情報熱力学の基礎を作りました。

彼の名前を持つ原理、ランダウア―の原理とは情報の処理プロセスにおいて1ビットの情報を失うとき、環境に放出される熱は最低でも kT ln 2 となるということを発見しました。それで沢山の論議を巻き起こしたマクスウェルの悪魔の問題が議論されたとき、悪魔の記憶の消去によるエントロピーの増加を表すものとして決定的な役割を果たしました。何が驚きだったかというと、情報の消去がない可逆計算ならば、原理的に情報処理にエネルギーがかからない、逆に情報の消去(忘却)する非可逆計算なら1ビットに最低kT ln 2のエネルギーが消費されるということ。つまり、情報が忘れられたときにのみエネルギーがかかるという、エネルギーと情報の関係がわかってきたのです。

熱的死 、情報的死、生理学的・医学的死、物理的死、、、

宇宙のエントロピーが最大となる状態を宇宙の熱的死 (heat death of the universe)といいますが、情報が非可逆的にプロセスされるなら、エントロピーが上昇しやがて情報的死が訪れるでしょう。情報的死とはここでは忘却です。死後だんだん忘れ去られ、いずれ誰もあなたのことを覚えていないということです。そして、生理学的・医学的死が訪れた後、人間の肉体もやがて土にかえり物理的死が訪れます。このようにいろんな死があって、それによって生きるって意味を考えるといいのではないでしょうか?生理学的・医学的に生きることが第一優先なら、あらゆる延命手段を使って病や老化と戦うべきです。また、生理学的・医学的な死の後に、もし、肉体が土にかえる物理的な死をさけて、物理的に生きることにこだわるなら、肉体をミイラにして保存してもらうのが良いのかもしれません。

でもね、やっぱりね、僕にとって『生きている』とか『生きる意味』というのは情報なんです。思い出の情報だと思います。環境問題や銃社会の難題を取り組もうとチャレンジした僕を、死後誰か(家族とか知り合い)が覚えていてくれたら、僕は情報的に死んでいないと思うんです。例え業績的に大したことなくても、世の中が少しでも良くなればいいなと自分で考え行動を起こしたって誰かが覚えている限り、僕は情報的に生きている。こういう考え方っていいなあと思うんです。

これが僕にとっての『生きる意味』ですかね。。

ちなみに、黒澤明監督の映画「生きる」。主人公が胃がんで余命半年、絶望の中で彷徨うのですが、彼の人生の最後にやりたい事、生きる意味を考えさせられます。とてもお勧めですよ、一度観てみてください。 

マサトナカムラ 」

Please follow and like us:

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *