【質問答えます】 アフリカにて森林保全の研究をしているM2です。今後の学費や生活費のことを考えると、この先PhDに進むことに不安があります。マサト先生にはそんな経験がありましたか?

質問者Wさん「修士課程終了後の進路で悩んでいるM2です。アフリカにて森林保全の研究をおこなっています(日本の大学です)。実態把握までを修士論文の目標としていて、その先のPhDをとるか悩んでいます。競争的資金の応募もしていますが、今後の学費や生活費のことを考えると、この先PhDに進むことに不安があります。大きな信念として、環境保全に貢献できるような人材になりたいと考えていますが、研究者としてだけでなく、民間やNGOなど方法はいくらでもあるような気がして、自分の研究自体はおもしろいと感じていますが、PhDを取ることに魅力を感じていません。 マサト先生にはそんな経験がありましたか?」

不安の根拠を分解してみる

僕「Wさん質問ありがとうございます。また、大学院生としての進路のお悩みをシェアしていただいてありがとうございます。Ph.Dを取るか悩んでいるとのことですが、そのWさんの不安の根拠を分けてみると以下のポイントが重要と考えれらます。

  1. 環境保全に貢献したい
  2. 学費や生活費が不安
  3. 研究者としてだけではなく、民間やNGOもある
  4. 研究自体は面白いがPh.Dに魅力を感じていない

まず、質問から先に答えると、はい、僕も学部・修士課程を通して悩みました。しかし、悩んだのは、何を研究してどこで博士号を取るかについてで、博士号そのものは絶対取るんだと決意していました。つまり博士号を取らないという選択肢は僕の中になかったので、博士課程に進むこと自体に不安を感じたことはなかったです。勿論、その後、研究者として就職活動・ファカルティポジションを得るのには苦労しましたよ。

研究者として就職活動・ファカルティポジションを得るのには苦労しましたよ

Wさんのお気持ちはとてもわかります。学部生で研究室やゼミに所属し研究を始めたり、大学院生になってより研究を進めていくと、誰もが皆、研究者としてのキャリアを考えたり、大学教授や学者になったりする人生を考えたりするものです。しかし現実は厳しく見えます。熱心に研究しようにも、職がないと研究活動は続けられないと思う人が圧倒的に多いからです。

Wさんのケースを考えてみましょう。1の環境保全に貢献したいという志は素晴らしいと思います。是非その気持ちをもってキャリアに活かして欲しいです。ただ、4ようにのPhDに魅力を感じていないのなら、博士課程に進む必要はありません。しかも2のように学費や生活費が不安だと思うのであれば、修士修了時点で、環境保全の企業や、NGO、NPO、若しくは政府系の組織などに目を向けて職探しをすることをお勧めします。まさに3のように考えるのです。

将来もしPhDを取りたくなったら大学院に戻ればいい

そして、自分が専門家として生活が安定し、将来もしPhDを取りたくなったら大学院に戻ればいいのです。また、仮に環境保全の専門家としての仕事がなくて、別な分野の職業についてしまっても、本当に環境分野のことがやりたいと思ったら、戻れるものです。例えば、環境保全と全く関係のない会計士になったとしても、もし環境に関連することをやりたかったら、環境会計の分野に進んでもいいし、会計士として生計を立てつつ、環境保全の大学院に戻ることも可能だと思います。

僕もWさんと同じ修士の頃まで材料科学(半導体)の分野でしたが、生計を立てながら留学資金を貯めるために、海洋研究施設のシステムエンジニアを東京でやったし、地球環境工学の博士号を取ってからも、生活の為にニューヨークで金融ITのエンジニアをやりました。今でも環境工学科ではなく、機械工学科の教官として工業デザインを教えています。修士課程の学生の頃の将来のイメージとは大きく異なることもあるのです。

自分の生計を立てつつ経済的に自立し、やりたいプロジェクトを探すことは全然可能ですので、環境保全への情熱が本当にあるなら是非持ち続けて欲しいです。

応援しています。

マサトナカムラ」

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