僕が今心血を注いでいる4つ事柄
僕が今心血を注いでいる事柄は、大きく分けて4つあります。それは、
1)専門の地球環境学や機械工学(IoT、ロボティクス)の研究、
2)NY貧困層のマイノリティーや女性等のSTEM教育、
3)アメリカの銃による自殺・子供による誤射の防止、
それと最近始めたのが、
4)日本の社会で困っている人(特に技術者)の支援、
です。
AI時代を迎え、ビックデータの解析や機械学習にかかる莫大な電力(エネルギー)消費は、地球環境学的にも面白いテーマ
まず、1)専門の地球環境学や機械工学の研究は、データドリブン・サステナビリティを主にやっています。 その環境データを取るためのIoTデバイスを使ったセンサーやロボットを開発しています。
それと、 ごみとかリサイクルのマテリアル・リカバリー、エネルギー・リカバリー(回収)、あと、環境シミュレーションを用いて物質・エネルギー・情報の3つの関係をテーマに研究しています。身近な例だと、災害時や緊急時に、物質(物資、水道など)、エネルギー(電力、ガス、暖をとる熱など)、情報(状況がもっとひどくなるのかよくなるのか、天気、避難場所など)の何から先に供給すべきか見極める。もっと大きいテーマの例だと、物質とエネルギーは等価であるってアルバート・アインシュタインがE=mc^2説明したけど、エネルギーと情報の関係も少しずつわかってきました。そして情報と物質の関係も解りつつあるのです。でも定量化にはまだまだ議論があって、その部分に取り組んでいます。Moore’s Law(ムーアの法則)はエンジニアじゃなくても知っている有名な法則ですが、その消費電力バージョン、つまり、消費電力当たりのコンピューテーション(計算能力)が1.57年ごとに2倍になるという、クーミーの法則(Koomey’s law)があります。情報処理にどこまでエネルギーが使われるかっていう課題は地球環境学的にも面白いテーマだと思っていて、これからのAI時代、ビックデータを解析したり、機械学習をさせたりする場合とてつもなく電力が消費されることもわかってきました。その部分の研究は生涯心血を注いでやりたいテーマです。これを始めたきっかけは環境学、半導体材料、シミュレーション、機械工学、金融工学の知識があったのが、大きいと思います。
僕の勤務校のデータによると学生の6割が世帯収入$30K以下(約300万円以下)
次に、2)NY貧困層のマイノリティーや女性等のSTEM教育、についてですが、これは僕の勤務校CUNY City Techの学生の影響です。何をやりたいのかというと、ちょっと説明が必要なんです。というのも僕の勤務校ニューヨーク市立大学(The City University of New York、略してCUNY)はNY州とNY市からお金が出ている公立大学で、その中での僕の赴任先は工科の学校(正式名称はNew York City College of Technology, 略してCity Tech)いわゆるテックカレッジとか工科カレッジといわれる日本でいうモノづくり大学みたいな所なんです。2018-19のCity TechのFact sheetによるとカレッジの学生の構成は約3割が黒人、別の3割がヒスパニック、2割がアジア人、1割が白人、1割がその他で、圧倒的にマイノリティーが多いです。学生の6割が世帯収入$30K以下(約300万円以下)で、新入生の8割が need-based aid(低所得層の人を優先する学資援助)を受けています。
金持ちがより金持ちになるのを助けるのではなく、貧困にあえぐ家庭の若者がミドルクラスに移って活躍するのを助ける
New York Timesの記事によるとNew York-Newark-Jersey Cityのメトロエリアに住む家族構成が3人で世帯収入が約$55K以下だと低所得者で、$165Kまでの世帯はミドルインカムのクラス、$165K以上だとアッパークラスと言われています。
なので、僕の感覚でいうとほとんどの学生が低所得世帯で学費援助を受けながらアルバイトもしている苦学生が多いのです。しかも学生の親の6割は大学を卒業しておらず、家族・親族で初めてのカレッジに息子・娘を送り出しているのです。卒業式になると、家族総出で優雅で派手な素晴らしい民族衣装を身にまとい、親族で初めて大学を卒業したわが子を祝います。その光景にはほろっと来ますよ。決して裕福でない親たちが子供を大学に行かせないで高卒のまま働かせれば、少しは家族の家計の足しにもなるでしょう。でも子供の将来のために大学に通わせてあげるのは大変だったと予想できます。リッチな家族のためのIvyリーグ・エリート教育機関に僕は長年居たので、その差は余計大きかったし衝撃的でした。アメリカの金持ちの子供が通う大学と、移民の貧困層が通う大学。僕にとって、心血を注いでやる凄い仕事・プロジェクトとは、金持ちの子供がもっと金持ちになるのを助けるのではなく、NYで貧困にあえぐ家庭の教育を担い、貧しい世帯の子供がミドルクラスに移って活躍するのを助けることだと思ったのです。
女性技術者や女性科学者、そして 『環境スーパーヒーロー』 の育成
そして、マイノリティーだけじゃなく、女性もSTEM分野(science, technology, engineering and math)での進出がまだまだ十分ではありません。もっと女性技術者が出てきてもいいし、女性科学者もいっぱい出てきて欲しいです。こういうアンダーリプレゼンテッド(マイノリティーや女性)が多くSTEM分野に進出すればもっと業界にも多様性が出てくると思います。そういう学生と一緒に地球環境学(科学、工学、テック)を研究し学生達の中から環境問題に取り組みながら地球を守る『環境スーパーヒーロー』が出てくると思っていて、そういう人物をトレーニングすることにパッションを感じます。将来、その『環境スーパーヒーロー』が、僕のオフィスを訪れ、僕と一緒に環境問題を解決するために戦ってくれると思ってます。
アメリカの銃社会をハックする
3)アメリカの銃による自殺・子供による誤射の防止、ですが、これはインダストリアル・デザイン(工業デザイン)の活動の一環で、アメリカの銃社会を少しでも改善するためにテクノロジーを使ってより安全な銃『スマート・ガン』(本人認証やセンサー搭載)を作るというプロジェクトです。2018年に記事になったのでこの記事を読んでいただけるとわかりやすいと思いますが( 下記リンク参照)、銃乱射・自殺・誤射を防ぐためのアイディアで今年特許を申請中です。関連技術のスタートアップも学生と始める予定でビジネス用のオフィスもブルックリンに借りています。
銃から死を遠ざける 米国で「スマートガン」の可能性を探る日本人研究者 | DG Lab Haus
きっかけはブルックリン区長のスマートガンデザインコンペで僕の学生とのチーム2組がファイナリストまで残って評価されたことです。NRA(全米ライフル協会)の圧力、合衆国憲法修正第2条の縛りなど、ガンコントロールはアメリカ人にとって敏感なものだということも認識させられました。共感してくれる仲間・問題意識を共有できる仲間を作って取り組んでいきたいと思います。
最後は日本の技術者:日本の社会で苦労している技術者や若者を応援したい
最後に、4)日本の社会で困っている人(特に技術者)の支援、ですが、これはまさにこのツイッターや、ブログを通して日本語で発信し、日本の社会で苦労している技術者や若者を応援しようというプロジェクトです。また、同じ志を持ってる素晴らしい仲間たちとの交流も含まれます。現状を変えたい人、留学・転職などを志す人に、僕ができることがあったら協力しますよという活動です。なぜこれをやり始めたのかというと、僕の今の職はNYの公立大学の先生で、市や州からお給料をもらってNY市民のHigher Ed(高等教育)を引き受けています。市職員だからNYの子供たちのために働くのはいいのですが、その一方でこのままだと、僕の母国である日本や日本人との交流が希薄になってしまいます。そこで、僕が職場でNYの若者を支援するのと同じように、日本の社会人・学生も支援したいとの思いから2019年の春から日本語で発信し始めました。つい連続ツイートしちゃうスタイルですが、隙間時間やニューヨークーワシントンDC間の移動時間を使ってやり続けたいと思っています。
長くなってしまいましたが、この4つが今心血を注いでいる僕のプロジェクトです。
Gさんは今何に”心血を注”いでいるのでしょうか?
Gさんは今何に”心血を注”いでいるのでしょうか?
いつかGさんとTwitterで交流できること楽しみにしています。その時はGさんの心血を注ぐプロジェクトをこっそり教えてください。
応援しています。
マサト・ナカムラ」